西東 三鬼:算術の少年しのび泣けり夏

算術の少年しのび泣けり夏 三鬼

 
 “算術の少年”、例えばそろばんの得意な少年なのか。勉強が得意という意味なのか、計算高い雰囲気もあるのだろうか。
 なぜ泣いているのか、しかも…忍び泣き? これらがシュールに放置されたまま、“夏”が畳みかけてくる。
 “算術の得意な少年”が泣いている点に三鬼らしいシニカルさがある。
 彼は俳句を本格的に始めて約二年でこの句を作ったらしい。恐るべき才人だ。
 
雑誌:『京大俳句』4-8
年月:昭和11.8.1
頁数:34p
備考:第一句集『旗』(三省堂、昭和15)に収録。後に句集『空港』にも再録