西東 三鬼: 熱ひそかなり空中に蠅つるむ

熱ひそかなり空中に蠅つるむ 三 鬼

 
 “熱”と“蠅”。ともに人間にとって不快なものだ。
 蠅(二匹ととりたいが、微妙)が静かに、そして耳障りな音を立ててつるむさまは、体内の菌が熱を発するかもしれない不穏な可能性をかきたてる。
 何気ない句だが、着想は鋭い。季語は「蠅」(夏)。
 
出典:『京大俳句』4-8
年月:昭和11.8.1
頁数:34p
備考:「会員集」冒頭に載る