2004-01-01から1年間の記事一覧

明治俳壇と日露戦争――旧派、秋声会、日本派を中心に   (「同志社国文学」)

■「同志社国文学」61号、2004.12.20、pp.387-397。 ■日露戦争時の俳壇にはどのような動向が存在したのか。俳壇を旧派、尾崎紅葉の息がかかった俳人達、そして俳誌「ホトトギス」派の三派に分けた時、戦争の影響がほぼ見られないのが「ホトゝギス」だった。そ…

西東 三鬼: 熱ひそかなり空中に蠅つるむ

熱ひそかなり空中に蠅つるむ 三 鬼 “熱”と“蠅”。ともに人間にとって不快なものだ。 蠅(二匹ととりたいが、微妙)が静かに、そして耳障りな音を立ててつるむさまは、体内の菌が熱を発するかもしれない不穏な可能性をかきたてる。 何気ない句だが、着想は鋭い…

西東 三鬼:算術の少年しのび泣けり夏

算術の少年しのび泣けり夏 三鬼 “算術の少年”、例えばそろばんの得意な少年なのか。勉強が得意という意味なのか、計算高い雰囲気もあるのだろうか。 なぜ泣いているのか、しかも…忍び泣き? これらがシュールに放置されたまま、“夏”が畳みかけてくる。 “算術…

西東 三鬼: 湖畔亭にヘヤピンこぼれ雷匂ふ

湖 畔 亭 に ヘ ヤ ピ ン こ ぼ れ 雷 匂 ふ 三 鬼 場所は“湖畔亭”。女性の“ヘヤピン”が髪からこぼれ落ちる。空には雷の予感がある。ただ、それだけ……ではなく、そこに何かしらの男女関係が反映しているところがポイントなのだろう。 ドラマの一場面のような…

山口 誓子: 夏暑し産科の器械かゞよへる

夏 暑 し 産 科 の 器 械 か ゞ よ へ る 山口 誓子 “産科”は産婦人科、また“かゞよへる”は「かゞよふ」。陽光が輝くという意味で、万葉集以来詠まれてきた歌語だ。 まず、取り合わせが見事。加えて、「夏暑し」の措辞が素晴らしい。幾重もの意味が折りたた…

山口 誓子: 蝉の尿燦たりけふの日を飾る

蝉 の 尿 燦 た り け ふ の 日 を 飾 る 山口 誓子 “尿”は「しと」と読む。“燦たり”の使い方が誓子らしい。“蝉の尿”が“けふの日を飾る”としたところに、この時期の誓子の心境が現れていよう。彼の初期句集『凍港』『黄旗』には表面に現れなかった心境だ。 …

石田波郷、昭和40年

■俳人名:石田波郷、52歳 ■掲載等:「鶴」25巻1号、昭和40年1月号に掲載。