攝津 幸彦: 南国に死して御恩のみなみかぜ  他

皇国且つ柱時計に真昼来ぬ 幾千代も散るは美し明日は三越 皇国花火の夜も英霊前をむき 春霞軍神といふ桧かな 南国に死して御恩のみなみかぜ 霧去りて万歳の手の不明かな 攝津幸彦による戦後俳句史の金字塔。彼はまだ二十代だった。 ------------------------…

攝津 幸彦: 黒船の黒の淋しさ靴にあり

黒 船 の 黒 の 淋 し さ 靴 に あ り 幸 彦 無季。“淋しさ”をどのように捉えるかで、作品の奥行きが変わるだろう。攝津らしい句。 攝津幸彦は前衛俳句の雄として期待されたが、早世した。 ---------------------------------------------------------------…

高屋 窓秋:母の手に英霊ふるへをり鉄路

母の手に英霊ふるへをり鉄路 窓秋 高屋窓秋の連作無季俳句中の一句。時は昭和十三年五月、日中戦争勃発から一年になりつつあった。同時代俳句と比較すると、窓秋の特殊さがよく分かる。 *出典:「京大俳句」6-5、1938.5.1 *頁数:18p *備考:「会員集」よ…

日野 草城: 高熱の鶴青空にただよへり

高 熱 の 鶴 青 空 に た だ よ へ り 草 城 戦争末期と敗戦後の混乱で心労が重なり、加えて肺を病んだ草城の句。 「高熱」にうなされ、すでに気品も覇気も失った「鶴」が、空が無限に広がる「青空」に不安定に漂う…病床に臥せる草城の心象風景を見るかのよ…