2003-04-01から1ヶ月間の記事一覧

芝 不器男:白藤や揺りやみしかばうすみどり

白藤や揺りやみしかばうすみどり 不器男 黄昏どきの白藤を描きつつ、夢幻のひとときすら感じさせる作品。 上五の「や」が絶品だ。普通なら「白藤の」とするところを、「白藤や」としたところが凄い。 天才と謳われた不器男の傑作。 *雑誌:「ホトトギス」31…

The Beach Boys"Heroes And Villains"のメモ

*久しぶりにBeach Boysを聴いている。「Pet Sounds」(1966)や「Smile」(1967)といった黄金期の曲だ。 この時期を、「黄金期」とするのは妥当でないかもしれない。 ビーチ・ボーイズのイメージは「Surfin’ USA」(1963)や「California Girls」(1965)…

道後温泉駅の伊予鉄市電:Iyo railway's trams in Dogo-onsen hot spring station

(画像クリック→flickr) ■道後温泉駅は往事の建物をレトロ調に復元しており、趣があります。 画像のモハ59、モハ61は伊予鉄市電の中でも古株で、いずれも1957年製造の車両です。 ■This train stop,also known as the doorway to the Dogo Onsen Hot Springs…

栗本薫『グイン・サーガ2 荒野の戦士』(ハヤカワ文庫)

*栗本薫『グイン・サーガ2 荒野の戦士』(ハヤカワ文庫、1979.10)、p.67。 *ヴラド大公の令嬢にして白騎士隊隊長、アムネリスの描写。 *若い女、というよりは、まだ少女といった方がふさわしいほどの年頃だったが、しかし彼女はすでに非常な威厳をかねそ…

小島政二郎『食いしん坊2』

*小島政二郎『食いしん坊2』(朝日文庫、1987年)、pp.23-24。単行本自体は『食いしん坊2』(文化出版局、1972)。 *天麩羅の話の流れで、昔の子どもの頃の様子を語るあたり。 下谷生まれの私には、佐竹ッ原というと、駆け出しても遊びに行ける近間の遊…

野澤 節子:花冷の扉ひらけば子の匂ひ

花冷の扉ひらけば子の匂ひ 節子 季語は「花冷」(春)。要点は下五にある。野澤節子はこういう句が詠めた俳人だった。 *収録:「俳句」20-6 *年月:昭和46.6.1 *頁数:32p *備考:「山こだま」五十句中の一句。

石田 波郷:夕つばめあつまつてとぶ空のあり

夕つばめあつまつてとぶ空のあり 波郷 季語は「夕つばめ」(春)。いかにも若き時代の波郷らしい一句だ。 *出典:「馬酔木」10-9、112号 *年月:1931.9.1 *頁数:47p *備考:水原秋桜子選雑詠欄

原 石鼎:高々と蝶こゆる谷の深さかな

高々と蝶こゆる谷の深さかな 石鼎 若き石鼎が奈良の奥吉野に住まっていた時期の傑作。壮大な景色を難なく詠みおおせる凄さとともに、鳥ではない「蝶」が谷を越えるという状況がすばらしい。 それにしても、この頃の石鼎は神がかっていた。 *出典:「ホトト…

川端 茅舎: 木蓮に瓦は銀の波を寄せ

木 蓮 に 瓦 は 銀 の 波 を 寄 せ 茅 舎 陽光をこれほど見事に言いおおせた俳句は、ちょっと他に見当たらない。加えてデッサンも完璧。 確かな描写と完璧な比喩が融合した見事な作品であり、茅舎にはこのタイプの傑作が多い。 ----------------------------…

吉川幸次郎『杜甫ノート』

■吉川幸次郎『杜甫ノート』(新潮文庫、S29)、pp.120-121。 ■杜甫の漢詩「春夜喜雨」を解した一節。飛躍するが、ハイデガーのヘルダーリンの詩及びギリシャ哲学の解釈にも通じる滑らかさを感じる。 ■ 野径雲倶黒 江船火独明 (野径に雲は倶に黒く 江船に火…

高屋窓秋 : ちるさくら海あをければ海へちる 「さくらの風景」連作

いま人が死にゆく家も花の蔭 晴れし日はさくらの空も遠く澄む 静かなるさくらも墓もそらの下 ちるさくら海あをければ海へちる --------------------------------------------- *雑誌:「馬酔木」6-10 *年月:昭和8.4.1 *頁数:147p *備考:総タイトル「…

ヘミングウェイ、福田陸太郎訳『移動祝祭日』

*アーネスト・ヘミングウェイ、福田陸太郎訳『移動祝祭日』(岩波同時代ライブラリー、1990.7)、p.7。 *「サン・ミシェル広場の良いカフェ」から。 *牡蠣は強い海のにおいとかすかな金属の味がしたが、冷たい白ぶどう酒はそれを洗い流して、あとにただ海…

小林秀雄「モオツァルト」

*小林秀雄『モオツァルト・無常という事』(新潮文庫、1967改版)収録、pp.53-54。「モオツァルト」(1946.7「創元」)の一節。 *模倣は独創の母である。ただ一人のほんとうの母親である。二人を引き離してしまったのは、ほんの近代の趣味にすぎない。模倣…

小林秀雄「モオツァルト」

*小林秀雄『モオツァルト・無常という事』(新潮文庫、1967改版)、p.18。 *「モオツァルト」(1946.7「創元」)の一節。 *美は人を沈黙させるとはよく言われることだが、このことを徹底して考えている人は、意外に少ないものである。 優れた芸術作品は、…