山口 誓子: 蝉の尿燦たりけふの日を飾る

   
 
 

蝉 の 尿 燦 た り け ふ の 日 を 飾 る  山口 誓子

 
 
  
 “尿”は「しと」と読む。“燦たり”の使い方が誓子らしい。“蝉の尿”が“けふの日を飾る”としたところに、この時期の誓子の心境が現れていよう。彼の初期句集『凍港』『黄旗』には表面に現れなかった心境だ。
 山口誓子といえば、句集『凍港』『黄旗』『炎昼』あたりに収録された作品が喧伝されるが、玄人はむしろ昭和15-20年頃の作品に畏怖を覚える。この句も誓子の凄みを感じさせる作品といえよう。

  
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雑誌:「俳句研究」7-10
年月:昭和15.10.1
頁数:9p
備考:総タイトル「伊豆その他」中の一句。
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