■1969年、ビートルズは最後のセッションをしていました。今から40年も経つのか……と感慨深くなります。
このように記すとその時代に生きていたようですが、僕は生まれていません。母がその頃の話をよくするので、どうも懐かしいと感じてしまいます。
1969年、ビートルズはアルバム「Abbey Road」を発表しました。日本でも売れ、母も購入するかどうか迷ったらしい。
結局、やめたそうな。
母はすでにローリング・ストーンズに興味が移り、“Jumpin’ Jack Flash”などを聴いていたため、「Abbey Road」にそこまで関心を抱けなかったとか(何年か前にビートルズの“Can’t By Me Love”や“Yesterday”に夢中だったらしいのですが)。
ただ、「Abbey Road」の“Something”(ジョージ・ハリスン作)は気に入ったらしく、ラジオでかかるのを心待ちにしていたそうです。当時はyou tubeもi-podもないため、ヒット・チューンを聴くにはラジオの前で待ち続ける時代でした。
極東の日本人女性に飽きられかけたビートルズは、そのころトゥイッケナムというスタジオで寒々しいリハーサルを繰り返していました。1969年1月頃です。
リーダーのジョンはビートルズに興味を失い、メンバー間も不仲に陥ってしまう。彼らをまとめ、良き方向へ導くマネージャーもすでにこの世に居ませんでした。
その他にも色々な要因が重なり、互いの短所を指摘しあって不仲を深める悪循環にハマった彼らは、実質上この年で解散します(正式発表は1970年)。
ビートルズにとって1969年は終焉の年でしたが、1月はまだ一緒にスタジオで演奏していました。演奏の大部分はレコード化されず、ひっそりと闇へ葬り去られましたが、一部をブートレグで聴くことができます。
以前、トゥイッケナムのリハーサル音源を母と聴いたことがありました。母は、「ビートルズはいいわね」と感想を洩らしたのを今でも覚えています。それまでは「あの頃はストーンズが光っていた」と言っていたのですが…。
トゥイッケナムのリハーサルの中でも、母は“I’ve Got A Feeling”がお気に入りです。いわく、「ストーンズよりハードじゃない? こういう曲をたくさん出してくれたら好きだったのに」。
なるほど。
しかし、ビートルズはハードな“I've Got A Feeling”を発表しないまま解散してしまいました。彼らはそういう気分ではなかったのでしょう。
それから約40年後、2009年の母は1969年1月の演奏ヴァージョン(トゥイッケナムのリハーサル版)を折々聴いているそうです。
■(BGM): The Beatles [I’ve Got A Feeling] (1969.1.2-10)