季語は「蟻地獄」(夏)。作品のうまさでいえば、最大の妙は下五を「伽藍かな」で終わらせたところ。「みな生きてゐる」の措辞も見事だ。僅か十七字しか使えない実作の感覚からすると、「みな生きてゐる」と七文字もある表現を使うのは、実作の修練をかなり経た上でなければ難しいかもしれない。
散文や詩、短歌とも違う、有季定型(五七五+季語)を知悉した作者ならではの傑作だ。
青畝は、高野素十や山口誓子あたりと比較すると、今や顧みられないことが少なくなったが、有季定型を使いこなした名人であり、昭和に何人といない俳人といえよう。玄人受けする作家である。
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*出典:「ホトトギス」30-12号
*年月:昭和2.9.1
*頁数:95p
*備考:虚子選雑詠欄、第二位。四句中の一句
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