俳句と、周りの景色13 日本語の倍音  (俳誌「白茅」13号)

「白茅」13号、2016.7.31、pp.13-15。
山口誓子の俳句を例にしつつ、俳句を翻訳する際、日本語と英語の文化圏の差異もさることながら、何をもって「俳句」とするかという訳者の価値観そのものが問われることを論じた。
 具体的には、「麗しき春の七曜またはじまる」(1941)は、英語では「Spring has come again, / with week after glorious week, / each of seven days」と訳されている。しかし、下五を「“また”はじまる」と破調の六字で終わらせた作者の意図としては、春の到来の喜びのみでなく、むしろ自身の心情等と無関係にめぐる季節に対する倦怠感や憂鬱等が漂っているが、英語訳ではそういった雰囲気は訳されていない。そこに日本語の「倍音」と「俳句」性をいかに捉えるかが解釈に関わっていることを述べた。