【エッセイ】趣味と写真と、ときどき俳句と11 異国情緒

初出:サイト「セクト・ポクリット」、2021.5.30。
趣味や大学の授業、俳句その他の随筆。11回目は愛媛県伊予市で撮った写真(高架線路を走るワンマン車両と水田)が、アメリカ人からすると強い異国情緒を覚える風景だったことを綴った。
  

 
 
 
 
 
愛媛県の伊予市に行った時、上のような写真を撮った。
 
高架線路を鈍行列車がのんびり走り、その下には水田が広がっている。六月上旬の梅雨頃で、すでに蒸し暑く、強い陽ざしが降り注いでいた。
 
この写真をアメリカの知り合いに見せたところ、とても驚き、「日本ではこういう景色は普通なのか?」と質問を寄せてきた。
 
「どこにでもある景色ではないけれど、地方に行くと割合見ることができるよ」と答えると、知り合いは再び驚いたようだった。「アメリカではこんな景色には出会えない。日本のアニメの中でしか観ることができない。まるで『千と千尋の神隠し』のようにエキゾチックな情景だ。いつかそこに行ってみたいよ」と言った。
 
それを聞いた時、私はなるほど、と感じた。
 
当然ながら、アメリカにこういう景色はないだろう。アジアのように水田地帯もなく、それも高架線路をワンマン車両がのんびり走るなどというのは、農耕民族の島国ならではの光景なのかもしれない。
 
山や川が多く、その間を縫うように田畑が広がり、その上を電車が走る……狭い土地を工夫して活用してきた日本らしい情景ともいえよう。
 
個人的には、ワンマン車両と水田の組み合わせがのどかな愛媛らしい景色と感じ、写真に撮ったのだが、アメリカ人からすると、『千と千尋の神隠し』を彷彿とさせる異国情緒を感じたようだった。
 
ところで、写真には青空の右上あたりにグライダーが映っている。ワンマン電車がのんびり去った後、黄色いグライダーは青空をゆっくり降下し、やがて視界から消えていった。
 
その間、周りには音もなく、風はとだえ、時おり鳥の鳴き声が響くのみだった。人も通らず、車の往来もなく、グライダーが消えた後はカメラを肩からぶら下げながら昼下がりの村を散策した。
 
なかなか贅沢なひとときだった、今ではと思う。
    
 
 
 
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