芝 不器男:白藤や揺りやみしかばうすみどり

白藤や揺りやみしかばうすみどり 不器男 黄昏どきの白藤を描きつつ、夢幻のひとときすら感じさせる作品。 上五の「や」が絶品だ。普通なら「白藤の」とするところを、「白藤や」としたところが凄い。 天才と謳われた不器男の傑作。 *雑誌:「ホトトギス」31…

野澤 節子:花冷の扉ひらけば子の匂ひ

花冷の扉ひらけば子の匂ひ 節子 季語は「花冷」(春)。要点は下五にある。野澤節子はこういう句が詠めた俳人だった。 *収録:「俳句」20-6 *年月:昭和46.6.1 *頁数:32p *備考:「山こだま」五十句中の一句。

原 石鼎:高々と蝶こゆる谷の深さかな

高々と蝶こゆる谷の深さかな 石鼎 若き石鼎が奈良の奥吉野に住まっていた時期の傑作。壮大な景色を難なく詠みおおせる凄さとともに、鳥ではない「蝶」が谷を越えるという状況がすばらしい。 それにしても、この頃の石鼎は神がかっていた。 *出典:「ホトト…

石田 波郷:夕つばめあつまつてとぶ空のあり

夕つばめあつまつてとぶ空のあり 波郷 季語は「夕つばめ」(春)。いかにも若き時代の波郷らしい一句だ。 *出典:「馬酔木」10-9、112号 *年月:1931.9.1 *頁数:47p *備考:水原秋桜子選雑詠欄

川端 茅舎: 木蓮に瓦は銀の波を寄せ

木 蓮 に 瓦 は 銀 の 波 を 寄 せ 茅 舎 陽光をこれほど見事に言いおおせた俳句は、ちょっと他に見当たらない。加えてデッサンも完璧。 確かな描写と完璧な比喩が融合した見事な作品であり、茅舎にはこのタイプの傑作が多い。 ----------------------------…

宇佐美魚目:香を聞くすがたかさなり春氷

香 を 聞 く す が た か さ な り 春 氷 魚 目 「香を聞く」は聞香、つまりお香のこと。中七「すがたかさなり」が絶妙だ。この時期の魚目の句にはいずれも気品があり、この句もすばらしい。 ■出典:「俳句」23-3 ■年月:昭和49.3.1 ■頁数:35p ■備考:タイ…